トップメッセージ
2020年1月期概況
東京ドームシティ事業の好調と、
順調な熱海事業等により増収増益
中期経営計画「新機軸」の4年目にあたる2020年1月期は、概ね堅調に推移いたしました。主な事業として当社グループのコア事業である東京ドームシティ事業においては、東京ドームを本拠地とする読売ジャイアンツが5年ぶりにリーグ優勝し、日本シリーズが開催されるなど、東京ドームでの野球関連イベントの開催日数増加と飲食店舗の好調、さらには緑やアートなどに囲われたフード&コミュニティ空間「Hi!EVERYVALLEY」、キャビンスタイルホテル「ファーストキャビン 東京ドームシティ」の開業が増収に貢献し、前年同期比増収増益となりました。
2019年3月に「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」がリニューアルオープンした熱海事業につきましては、同施設の開業当初に清掃業務などの人材不足により一定程度に宿泊予約を抑えることとなりましたが、下期からは体制も整備され、順調に稼働いたしました。熱海事業としては同施設の開業による増収の一方で、開業費用の増加に伴い減益となりました。これらの結果、2020年1月期連結業績は、売上高は915億5千7百万円(前年同期比5.2%増)、営業利益は117億2千8百万円(前年同期比2.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は80億2百万円(前年同期比14.9%増)となりました。
今後の重点テーマについて
東京ドームの高付加価値化など、将来に向けた施策を継続
現在、当社グループは、2016年2月から2021年1月までを対象期間とする中期経営計画「新機軸」に掲げた経営目標の達成に向け、総力を挙げて同計画のアクションプランに取り組み、営業基盤の構築において成果を挙げつつあります。その一方で、今後も引き続き、下記のテーマについて重点的に取り組んでいく必要があると認識しています。
今後の重点テーマについて
「東京ドームの高付加価値化」 |
|
---|---|
「東京ドームを中心とする 東京ドームシティへの価値波及」 |
|
「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN の 収益向上」 |
|
「コーポレート・ガバナンスのさらなる強化」 |
|
中期経営計画「新機軸」期間中における主な取り組み
取り組み内容 | 期間 |
---|---|
東京ドームの大規模リニューアル | 2016年1月から3年間 |
東京ドームグループ教育センター(現教育センター部)を設置 | 2016年2月 |
Audio guide Q提供開始 ※2020年3月提供終了 | 2016年7月 |
Stroll Tips配信開始 | 2016年9月 |
CuBAR LOUNGE開場 | 2017年3月 |
マーケティング本部を新設 | 2017年4月 |
インシデント情報管理システムを導入 | 2017年4月 |
Gallery AaMo開場 | 2017年4月 |
Crème et Rouge開店 | 2017年4月 |
Spa LaQuaのリニューアル | 2017年10月 |
公式サイトの多言語化を実施 | 2018年1月 |
東京ドームオンライン野球塾サービス開始 | 2018年4月 |
全国ご当地グルメッセを香川県で開催(以後静岡、仙台でも開催) | 2018年4月 |
オフト後楽園の移転とラウンジセブン開場 | 2018年6月~7月 |
Hi!EVERYVALLEY開業 | 2019年3月 |
ファーストキャビン 東京ドームシティ開業 | 2019年3月 |
東京ドームシティ アトラクションズに2機種 「バックダーン」「ガンガンバトラーズ」オープン |
2019年3月 |
ATAMI BAY RESORT KORAKUENオープン | 2019年3月 |
東京ドームの高付加価値化
東京ドームにつきましては、スタジアムの環境整備として2019年7月から2020年3月にかけて、①高密度Wi-Fiの設置 ②車椅子席の増席 ③プライベートルームの新設を行いました。このうち高密度Wi-Fiの設置については、東京ドーム内のWi-Fiアクセスポイントを増やすなどハード面の通信環境を整備したものです。今後はイベント主催者など外部の皆様と連携しながら、例えば新しいアプリなど、ソフト面からの充実を図りたいと考えています。海外ではスタジアムでライブの試合やコンサート、イベントを楽しむだけでなく、見逃した試合映像の視聴、選手情報の取得、店舗やトイレの混雑状況の確認、ケータリングサービスなど、スマートフォン等を活用した様々なサービスが展開されています。お客様に東京ドームをより快適かつ多角的に楽しんでいただくために可能性を追求してまいります。
また高付加価値化の一環として飲食物販店舗の新装等につきましては、2020年1月期にはフード&コミュニティ空間「Hi!EVERYVALLEY」、「東京ドームグルメストリート」を開業して初年度から順調に実績を挙げています。2021年1月期には東京ドーム4階コンコースの飲食売店リニューアルし、試合を観戦できるモニターを備え付け、外の景色を楽しみながら最大80名が楽しめるイートインエリアです。
東京ドームスタジアム環境整備に関する取り組み
東京ドームは2019年7月から2020年3月にかけて、スタジアムビジネスにおける新たなニーズへの対応として、以下の3つのリニューアル工事を実施しています。
①高密度Wi-Fiの設置 | 「スタジアム・ソリューションの導入」「ファンサービスの一層の拡充」を図り、今後、スタジアムを訪れた多くのお客様に様々な体験を提供し、ライブエンタテインメントの魅力を引き上げることで、スタジアムの価値を更に高め、集客力と収益力の向上を目指します。 |
---|---|
②車椅子席の増席 | 従来12席だった車椅子席を22席に増設し、席幅も拡げ、観戦および観覧環境の改善に努めています。 |
③プライベートルーム新設 | 壁で仕切られた半個室のプライベートルームを内野席最後部に新設し、グループでお見えのお客様にリラックスして野球観戦を楽しめる環境を整備しています。
![]() ![]() |
東京ドームを中心とする東京ドームシティへの価値波及
当社グループは東京ドームという日本有数の大規模集客施設を保有し、高い認知度を誇ります。しかしながら、東京ドームシティという名称についてはお客様への認知が十分ではないと認識しています。東京ドームシティ アトラクションズをはじめとして各世代、性別、様々な嗜好のお客様に楽しんでいただける各施設や東京ドームシティという“街全体の魅力”を知っていただくブランディングに取り組むことで、東京ドームシティ事業全体への波及効果が生まれると考えています。
一方、東京ドームシティ アトラクションズでは1年を通じてさまざまなイベントを開催しています。今後はさらに東京ドームシティ内の他施設や近隣地域とも連携することで、東京ドームシティ アトラクションズのイベント発信力がエリア全体に広がることを目指しています。
東京ドームホテルは2000年に創業以来、シティホテルとして多くのお客様にご利用いただいています。一方でお客様のニーズは変化し続けており、IT環境の整備だけでなく、きめ細やかな客室環境の改善に取り組むことで、お客様の高い満足度の維持に努めてまいります。
ATAMI BAY RESORT KORAKUEN の収益向上
2019年3月、当社グループが1965年から運営する熱海後楽園ホテルを、ホテル、スパ、レストラン、フードマーケットの複合型リゾートATAMI BAY RESORT KORAKUENとしてリニューアルオープンしました。その大きな目的は、熱海を訪れる旅行者のライフスタイルの変化に対応することでした。従来の旅館ビジネスでは企業等の団体旅行客がメインターゲットでしたが、現在はシニアや若い女性の少人数の旅行客、または個人が日帰りで温泉に訪れるなど旅行スタイルは多様化しています。ATAMI BAY RESORT KORAKUENでは新館「AQUA SQUARE」を設けて個人客や日帰り客を含む多様なニーズに対応するほか、熱海市と協働した「おでかけ熱海」キャンペーンを展開し、熱海という街の魅力を知っていただき訪れる事で、当社グループ施設への活用につなげていきたいと考えています。今後は開業初年度の経験を活かし、高付加価値の商品販売戦略、効果的な宣伝販促の実施等につなげていきます。
コーポレート・ガバナンスのさらなる強化
2020年3月24日の取締役会では弁護士の石田惠美氏を社外取締役候補者として選任し、取締役10名のうち4名が社外取締役となりました。今後は取締役会の活性化などに取り組み、株主の皆様や社会の要請に応えるべく、コーポレート・ガバナンスの強化に努めてまいります。
COVID-19感染拡大への対応
グループ全体で情報共有を徹底し、迅速に感染症対策を実施
世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大を受けて、当社グループにおいては2020年1月時点においてグループ横断的に感染症対策チームを立ち上げました。“感染しない、感染させない”をモットーに、チームは外部からの情報収集とグループ内での情報共有に取り組み、週1度の経営陣への報告とともに、2月にはマスクなどの備品をグループの清掃専門会社を通して迅速に確保、従業員やお客様向けの感染症予防マニュアルと具体的なフローを策定し、グループ全体に周知を行いました(表「新型コロナウイルス感染拡大防止の対応」ご参照)。
その後、3月には社長を本部長とし、常勤取締役を構成員とする災害対策本部を設置し、東京都からの指針に基づき、各事業所の営業休止あるいは再開など重大な意思決定が速やかにできる体制を整備しました。2020年3月時点における施設の休止状況はHPや当社発信資料に記載のとおりですが、感染者のクラスターを決して出してはいけないとの思いから、東京ドームや東京ドームシティ アトラクションズなどのお客様が近接しやすい施設は利用休止にする一方、東京ドームホテルやスパ ラクーアなどの比較的距離が保てる施設では時間を短縮して営業を継続しました。一方で、本来は施設でイベントを開催して集客する事が当社グループのビジネスモデルですが、早い段階から一切集客する事を自粛し、通常の営業の中でお見えいただいたお客様への対応に留めました。大変難しい判断でしたが、当社グループの社会的責任を認識したことはもちろん、当社グループの経営理念/企業目的に掲げる“人とのふれあいを通しての感動の共有”を今後も実践し続けるためにも、感染者を出さない事が最重要課題であると考えました。
また、感染症拡大防止対策においては、過去における東京ドームシティ アトラクションズで生じたコースター事故、東京ドームホテルでの食中毒など、当社グループにとっては苦い体験を決して忘れることなく、その都度、徹底した原因究明と対策を行い、施策をグループ全体で共有してきたことが、早期のマニュアル策定やグループ全体への周知徹底に結びつきました。
創業当初から当社グループにおける最大のテーマは、お客様の安全・安心の確保です。以前から当社グループ内では、実践的な防災・防犯の教育・訓練活動、テロ対策を含む仕組みづくりに加えて、当社の安全推進室が中心となり、グループ内で発生した不具合やヒヤリハット事例、他社施設の事故・災害に関する情報をインシデント情報管理システムとしてデータベース化し、情報共有を行ってまいりました。近年は東京ドームシティ アトラクションズが取り組む「安全活動モデルAAA(トリプルエー)」をグループ全体に導入し、よりレベルの高い安全管理体制の構築を進めてまいります。
新型コロナウイルス感染拡大防止の対応
従業員への対応
![]() |
|
---|---|
施設への対応
![]() |
|
お客様へのお願い
![]() |
|
今後の取組みについて
外部との連携を深め、リアルとバーチャル双方の取り組みを加速化
2021年1月期は中期経営計画「新機軸」の最終年度であり、計画目標達成に向けてグループ一丸となって取り組もうとした矢先に、新型コロナウイルス感染拡大という問題が発生しました。当社に置きましては新型コロナウイルス感染拡大の影響による営業の休止やイベント中止に伴う売上の大幅な減少と、サーモグラフィ購入など対策費用の増加による業績悪化の見通しを受け、経営計画の収益性目標である連結営業利益130億円、資本運用の効率性目標「連結ROA4.0%、連結ROE 6.0%」への影響は避け難い状況と認識しています。当面の対策として、オペレーションにおける効率化や各種のコスト削減に努め、その一環として、2020年5~7月における取締役(社外を除く)、執行役員、常勤監査役の役員報酬を自主返納(40~10%)いたします。なお、2021年期の1株当たり配当金につきましては、安定配当12円を予定し、業績連動配当については未定とさせていただきます。
世界的な新型コロナウイルス感染拡大については、完全な終息までには長期の時間が必要なのと同時に、“アフターコロナ”の人々のライフスタイルなど社会全体に変革を及ぼすと予測されます。前述のとおり、当社グループの経営理念では「人と ひと とのふれあい」を通して「お客様と感動を共有」し、豊かな社会の実現に貢献することを企業目的と位置づけています。今回の感染拡大後においても、人々が“ふれあい”と“感動の共有”を求めていること、当社の社会的役割には変わりはありません。しかし、今後、経営理念を実践するためには、当社グループ自身の変革が不可欠であると認識しています。
冒頭に重要テーマ「東京ドームの高付加価値化」でお話しましたとおり、ライブの試合やイベントだけでなく、スタジアムのデジタル化やIT化によって、様々な多角的なサービスを提供できる可能性があります。中長期的には、ワクチンの開発等により、人々は直接的なふれあいやライブイベントを安心して楽しむ時間を取り戻します。その間に、当社グループが変わらず“ライブなふれあいと感動”を皆様にご提供すると同時に、“バーチャルなふれあいと感動”を提供できるビジネスモデルを構築することが当社グループの将来成長に結びつくと考えています。
近年、当社グループにおいてはIT事業の多角化と人材確保のために、子会社化や資本業務提携を進めてまいりました。2020年1月期には、人材派遣もしくは業務受託によるIT開発・販売を中心に事業を展開する株式会社ソフトレック(現:株式会社東京ドームITソリューションズ)を完全子会社化(非連結会社)するとともに、HRテックサービスを展開するパーソナルエージェントホールディングス株式会社、IoT 端末の「AIBeacon(エーアイビーコン)」を活用する株式会社アドインテ、多言語翻訳ツール「Kotozna Chat(コトツナチャット)」を提供するKotozna(コトツナ)株式会社との資本業務提携を行っています。これらの企業との連携により、当社グループが新たな“バーチャルなふれあいと感動共有”できるビジネスモデルの構築に向けて基本となるデータ収集・解析、IT系人材など、当社グループ機能を補完するとともに、当社グループにおいてノウハウの蓄積とIT系人材の育成につなげてまいります。
引き続き、日々のグループ全体で実践的な感染拡大防止策を徹底し、お客様に安全・安心な場を提供するとともに、変化する状況を見極めながら当社グループにおける課題を整理し、中長期的観点での経営計画を策定し、一つずつ施策を実行してまいります。株主、投資家、ステークホルダーの皆様にはご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。